仏教から生まれた日常の言葉

成城山耕雲寺

けんちん汁

 物質文明を謳歌している現代社会において、物は豊になり「消費は美徳」などという言葉も生まれ、とかく物を粗末にする風潮があります。まだ十分に使える物を平気でポイと捨てて、もったいないとも何とも思わなくなり、物のいのちをいとおしむ感覚がマヒしてしまうような傾向にあるのは残念です。
 さて、たいていの家庭でおなじみの「けんちん汁」は、特に寒い季節に好まれる庶民的惣菜の一つですが、これはもともと禅僧が中国から伝えたもので、漢字では「巻繊」と書いてケンチャンとも読みます。禅の修業道場では、食物の取り扱いや食事作法が厳しいことはよくいわれますが、特に道元禅師は、炊事の心得を説いた書物の中で「たとえ一粒の米、一枚の菜っ葉でも粗末に捨てず、自分の目玉のように取り扱え」と、戒めています。そこで、普通なら廃棄して、かえり見ないような大根の尻尾や、枯れかけた菜っ葉などの切れ端ばかりを集めて調理した惣菜を「けんちん汁」と呼ぶようになったのがその起源です。だから今でも、けんちん汁には多くの野菜類を細かく刻みこむのです。
 物は大切に、とことん生かして使う気風を、けんちん汁に託して教えたのが、この調理法ですが、食物以外のすべての物に対しても、同様の心がけで対処したいものです。

静岡県成道寺 伊久美 清智師 著より


 
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