仏教から生まれた日常の言葉

成城山耕雲寺

降伏(こうふく)

 戦争に負けたり、やっつけられて「こうさん」するという意味で使われている「降伏」という言葉があります。日本では昭和十二年に始まった日中戦争が、拡大の一途をたどり昭和十六年十二月、第二次世界大戦となって日本本土も戦禍を受け、ついに昭和二十年八月、無条件降伏という憂き目を見たのでした。この「降伏」は、一般には「こうふく」と濁点をつけずに読み、相手方に降参することですが、仏教用語では「ごうぶく」と読んで、修行の妨げとなる人間の本能ともいうべき欲望、迷いを「おしふせる」ことを意味しました。
 お釈迦様がインド・ブッタガヤにおいて菩提樹の下で坐禅を組んで静かに瞑想をしていると、さまざまな悪魔が現れ脅迫や誘惑をして修行を妨げましたが、お釈迦様は降魔(ごうま=悪魔を降伏させること)を念じて、悪魔を退散させ、悟りを開かれたというお話があります。
自己の心の中にあるさまざまな煩悩の葛藤を悪魔にたとえたもので、煩悩を降伏することによって、悟りに到達されたのです。降伏すべき対象は外にあるのではなく、人間の内面にあるのです。
「恨みは恨みによってやむことはない。恨みを捨ててこそやむのである」と、経典に書かれていますが、降伏すべきものを外側に向かって追い求めているかぎり、人は永遠にその目的をとげることはできないのです。

静岡県成道寺 伊久美 清智師 著より


 
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