第88話 「ボーン」となるから梵鐘?
鐘はもともと梵鐘や喚鐘といわれているが、これはなにも「ボーン」となるから梵鐘、「カーン」となるから喚鐘と名付けられたわけではない。
梵とはブラフマンというインド教の最高原理の音訳で、梵鐘とはインドから伝わった鐘という意味である。喚鐘は梵鐘の小型のもので、半鐘ともいい、ともに時を知らせるためにうつ鐘である。
インドでは僧団の集会などで用いる木製の揵稚(かんち)や内部に舌を垂れた振鐘はあるが、青銅製の鐘はなかったらしい。
中国では後周時代あたりから盛んに鐘がつくられ、仏教とともに奈良朝推古天皇の時代(七世紀)に朝鮮を経て日本に伝わったものである。
梵鐘は一般に、鐘楼堂につりさげられているから別名「釣鐘」(つりがね)ともいい、また撞木(しゅもく)でつくから撞鐘(つきがね)ともいう。この撞木の材料は〝しゅろの木″が一番良いとされている。
能狂言に『鐘の音』というのがあるが、これは頭の弱い太郎冠者が主人から頼まれた刀の付金 をつきがねつきがねと聞きちがえわざわざ鎌倉の建長寺まで撞鐘を買いにいく話である。そのほか謡曲『道成寺』など鐘にまつわる伝説が多い。
出典:松涛弘道著「誰もが知りたい 217 項 仏教のわかる本」廣済堂出版
1974 年出版 97 ページ