第49話 子煩悩(こぼんのう)

人並み以上に自分の子どもをかわいがる人のことを、「あの人は子煩悩だね」
などと感心したように言いますが、もとは別の意味をもっていました。
わが子に保険金をかけて殺してしまうという、とんでもない親もいましたが、
わが子がかわいくない親はいないはずです。でも、かわいがるのも度が過ぎれば
、かえって迷いともなり、苦しみともなります。
煩悩の語源はインド古語サンスクリット語の「クレーシャ」で「苦しみを与える
もの」「束縛」という意味があります。「子は煩悩」というのが「子煩悩」の本来
の使われ方であったようです。『子ゆえに迷う親の道』という言葉がありますが、
子どもがいるから親になれたのだし、子育ての苦しみがあるからこそ親として
成長していくのです。

静岡県成道寺 伊久美 清智師 著より