第118話 摩訶不思議(まかふしぎ)

「摩訶」という言葉は、インド古語サンスクリット語の「マハー」の音訳で、「大きい」とも「多い」とも「勝れた」とも意訳することができます。ならば「大不思議」」とでも訳しておいてもらえば分かりやすいものを、なぜ「摩訶」という意味の分からぬ音写語を使っているかというと、「摩訶」を「大」と訳したら「多」と「勝」の意味が失われるし、「多」と訳したら「大」と「勝」の意味が失われてしまいます。「勝」にしても同じことで、「マハー」には一語で三つの意味をもっているのだから、あえて意訳しないほうがよいと考えたのでしょう。

「摩訶」を訳せば「大」となりますが、単に「大きい」というだけの意味ではなく、「偉大な」といったニュアンスもこめられています。次に「不思議」ですが、「思議することのできない」という意味で、本来は、思考や言語を絶した悟りの世界や境地、仏の知恵そのものを表すのに使われたものです。「摩訶不思議」は、本来は「とても不思議な」というだけではない悟りのすばらしさを示す言葉だったのです。

静岡県成道寺 伊久美 清智師 著より