第119話 冥利(みょうり)
「冥」は、暗やみで何も見えないこと。「利」は、利益、加護のこと。「神仏が知らず知らずのうちに与える恩恵。善い行ないの結果として受ける利益のこと」と辞書にはあります。私たちは、この目では直接見えないさまざまなおかげ(助力)があって生きていくことができるのだという感謝の気持ちを表した言葉でもあります。私たち人間を含め、全ての生きとし生きるものは、空気なしでは生きていくことはできません。空気は目には見えませんが、この地球上に確実に存在しています。私たちは空気をはじめ、多くの恩恵によって生かせてもらい、また生かされているのです。たった一粒の米でも、空気、太陽、土、水、肥料など、多くのおかげがあって、数か月の日数を経てはじめて実るのです。
さらにそれが私たちの口に入るまでには数多くの人々の力と日数が加わります。数多くの冥利によって生かされている私たち。その恩恵に感謝の気持ちを忘れてはならないというのがこの語の真意なのです。
静岡県成道寺 伊久美 清智師 著より