第73話 仏法僧の三宝

わが国の代表的人物である聖徳太子は、七世紀に『十七条憲法』を発布し、その第二条に「篤く三宝を敬え、三宝とは仏法僧なり」と記し、三宝を敬うことによってわが国を正しく治めようとした。「仏法僧」というと、おそらく鳥の名前だろうと思うかも知れない。しかしこれは全仏教徒の従うべき、最高の指導原理なのである。

では一体、仏法僧の三宝とは何であろうか。
まず仏宝とは、悟りを開いて仏となり、真理の体現者となったひとを敬い、われわれもそうなるよう努力すべきことである。
法宝とは、悟りの内容である真理そのものを敬い、個人的な利害を乗り越えて、より広くより深くわれわれをとりまく世界のあるがままの姿をとらえ、その正しい価値を知ることである。
僧宝とは、悟りに向かうよき人びとの集いを敬い、彼らとよく交わることによって運命共同体としての人間のいのちをたしかめ合うことである。

この三つの宝は、伝統的には仏宝(仏陀)、法宝(仏教)、僧宝(仏教徒)を敬うことを意味するが、広義には、人間の自主性、自由性、平和性を尊重すべきわれわれの指導原理にもなっている。

出典:松涛弘道著「誰もが知りたい217項 仏教のわかる本」廣済堂出版
1974年出版 201ページ