第74話 お釈迦さまの誕生日

セナールという学者は、「釈迦はインドの太陽神話に出てくる架空の人物だ」と『仏陀の伝説』の中で述べているが、仏教の開祖である釈迦は実在の人物でない、という意見がかつてあったことは事実である。
しかし、一八九七年にペッペがネパール南部のピプラーバーで骨壺を発掘したところ、その表面インドの古代文字で「この仏陀の骨壺は釈迦族が兄弟姉妹妻子とともに、心をこめて安置する」ときざまれてあり、『遊行経』(ゆぎょうきょう)などの経典に述べられてある。「釈迦の滅後、その遺骨は八つに分骨し、その一分を釈迦族はカピラバッツに安置した」との記述と一致するから、今日では誰も釈迦の実在を疑う者はいない。

では、釈迦はいつ生まれたのだろうか。

『衆聖点記』(しゅしょうてんき)という中国に伝わる書物によると、釈迦の滅後第一年目の弟子の結集で、仏弟子ウパーリが一点を記し、その後この記録が中国に伝わるまで、毎年の結集(けつじゅう)ごとに一点を加えていったという。これから逆算すると、釈迦の生年は紀元前五六六年となる。わが国ではこれをもととして昭和九年に仏誕二千五百年の記念祭をいとなんだ。しかし、その後の新しい資料によると、釈迦の生年は紀元前四八三年の四月八日になるという。いずれにしても、インドではその暑い気候によって他国のように年代に重きをおかないので、およその年代が分かっただけでも満足すべきであろう。

出典:松涛弘道著「誰もが知りたい217項 仏教のわかる本」廣済堂出版
1974年出版 47ページ