第79話 「寺」と「院」のちがい
多くの寺院には、清水寺、知恩院、成田山というように、寺や院や山の名前がついているが、ともに寺院としての機能をはたし、仏像をまつり礼拝や修行の場所であることには変わりがない。
もともとインドでは、寺院は僧園(僧伽藍)と呼ばれ、篤信者によって寄進されたものである。寄進とは梵語で「ダーナ」といい、ここから「施すことのできる」ひとを旦那と呼ぶようになった。
寺とは中国の漢時代に、外国の使臣を泊める役所あるいは官庁を指し、仏教僧がインドから来朝した時に鴻臚寺(こうろじ)という役所に泊ったところから、次第に僧侶の住居を寺というようになった。寺をテラと呼ぶのは、パリー語(インド古語)のテーラ(長老)、韓国語のチョル(礼拝所)、それから日本語の「照らす所」から転化したとの三説がある。
院とは、回廊とか垣根をめぐらした園という意味で、仏教寺院を僧院とか僧園とも呼んでいる。われわれの行きつけの学院や美容院や病院も、学園や公園にも回廊や垣根がなければおかしなものになってしまう。
山とは、中国ではそもそも寺院を山中にたてたところから、その所在地の山名をつけるようになり、わが国では鎌倉時代以後に、平地にたてられた寺院であっても山号をつけ、その門を山門と呼んでいる。
現在の寺院は大抵、金竜山伝法院浅草寺とか三縁山広度院増上寺というように、ひとつの寺院で山号、寺号を持ち、そのうちの一番使いやすい名前で普通呼ばれている。
出典:松涛弘道著「誰もが知りたい217項 仏教のわかる本」廣済堂出版
1974年出版 77ページ