第77話 お寺の分類法

わが国には現在約七万の寺院があるといわれるが、それぞれの寺はその活動目的によって、菩提寺、祈祷寺、修行寺に大別できよう。こうした名称がそれぞれの寺についているわけではなく、また一寺でこれら三つの目的を兼務するところもある。

第一の菩提寺とは、檀家を持ち、その葬儀や法事を行い、墓地を管理する。日本仏教が葬式仏教だといわれるのも、葬祭を中心として活動する寺院が圧倒的に多いためで、全国の大部分のものがこれにあてはまる。

第二の祈祷寺とは、商売繁盛、病魔退散、交通安全などの現世利益を人びとに授ける寺院で、真言宗など密教系の宗教に属する寺に多い。

第三の修行寺とは、仏道を実践する自己研鑽の道場で、ここに住む僧侶は日夜、唱名、座禅などの行にはげみ、一般の人びとに公開しないのを原則としている。鎌倉時代に生まれた宗派の寺院や、各宗の総、大本山などにこの種のものが多い。

このほかに、数こそ少ないが観光寺といい、その保有する由緒ある仏像、建築物、庭園、什物などを有料で一般公開するところや、宿坊やテラステイのように一般の人びとを良心的に宿泊させるところもあり、こまかく分類するとキリがない。しかし、これらの寺院に共通した特徴は、みな仏法興隆の道場であり、それ以外の何ものでもないことだ。

出典:松涛弘道著「誰もが知りたい217項 仏教のわかる本」廣済堂出版
1974年出版 76ページ