第28話 仏壇に本尊様を祀(まつ)るのは
私共の家には仏壇が飾られている場合が多いですが、仏壇とはお位牌を入れるところ、ご先祖様を祀るところ、と言う考え方が一般に定着しているため「お仏壇にはご本尊様をお祀りしなければなりません」と言うとけげんな顔をする方がいらっしゃいます。
ご本尊様のない仏壇とは、まるで主のいない家のようなものです。
ご本尊様はその宗派の教えを具現化した姿であり、私たちの先祖も同じ姿に近づこうとして、修行の目標としている仏の姿です。 もちろん私たちも先祖と同様にその目標に向かって進んでいるわけです。
ご本尊様を家の守り神、自分の守護仏と考えるのは、いわゆる神道における祖霊信仰が根流にあるからでしょうが、釈迦の教えは仏様が守ってくださるというよりは、一歩でも半歩でも仏様に近づく自分であるように、仏の世界に思いをこらし、自分の心を見つめなおすことに有るのです。
ご本尊様の命と同じいのちを持っている私たちですが、私たちは様々な欲望からそのいのちの現われである仏心を見つめるチャンスはあまりありません。仏心よりも先に欲が顔を出し、仏心の出てくることをさえぎります。しかし、日常生活の中にも、我を忘れて他人のために尽くしたり、心配したり、自分では驚くほどに善い心になっているときもあります。
その瞬間は仏そのものなのです。
ところがそれはまさに瞬間の出来事であってどうも持続することが無い。
そうした自分をじっくり反省し、少しでも仏に近づく生活が出来るようにと、誓願をこめるためにご本尊が必要になってくるわけです。
さらに私たちは自分一人の力で生きているのではなく、先祖をはじめとして多くの人やもののおかげによって生かされている事を自覚し、すべての物に感謝する心を養うためにも、ご本尊様とむかい会うことは大切なことです。