第37話 『戒名(かいみょう)について』

ひとがなくなると故人を葬る儀式を行います。その時、一般的に戒名をつけて葬儀を行い個人を偲びます。

戒名とはお釈迦さまのみ弟子となって、仏弟子にふさわしい名をいただき、安楽な境涯を送る。
すなわち成仏(じょうぶつ)するという意味が込められているのです。
元来「戒法を受けた人の名前」のことで仏教の発祥地インドでは、出家者を釈子(しゃくし)、沙門(しゃもん)とよび、在家の人は俗名でよばれていました。
中国に伝来してからは仏教の戒法を受けた僧侶には法名(ほうみょう)が与えられ、これを戒名と呼んだのが始まりです。
日本では鎌倉時代から戒名が始まりましたが、最初は僧侶だけの名であり、以後次第に在家の信者にも授けられるようになりました。

近年仏教による葬式、法事が盛んになり、故人を成仏させるための追福の慈悲の心から故人にも授戒したことを証明する「血脈(けちみやく)」を葬儀の時に与えて戒名を追贈したのです。
俗名で葬儀を行うと成仏せずその霊は亡霊として宙にさまようとも考えられています。戒名をつけて葬儀を行った方が故人は安心して成仏できるということでしょうか。

戒名はほとんどの人が亡くなったときに授与されますが、本来は生前中に真の仏教徒としての自覚をもち、正しい信仰心を深め、日々精進し、その名に恥じない人生を送るために頂く物です。

生前につけることを逆修(ぎゃくしゅう)といい、その字の通りの意味になります。
当初戒名は二文字だけでしたが、今日のように長い戒名になったのは、仏教に帰依してお寺を建立した人に対して、戒名の上に特別に貢献した意を重んじて院号をつけることによります。
その後自分の持っている雅号を加えたり、尊い人の名を一文字入れたり、その人の人柄、趣味、仕事に因んだ文字を入れたりし、次第に長くなり現在のような戒名が形づけられてきたのです。

本来は仏に帰依することを約束した人につけられる名前ですので生前に戒名を頂くのが本当だといえるのです。
戒名はいらない、俗名のままでいいという方もおりますが、先述した様に戒名のあることにより成仏の世界へ進んでいくものです。
是非正しい段階を経て頂くことが大切なのではないでしょうか。