第116話 法螺(ほら)

「彼の言うことはホラばかりで信用できない」とか「大ボラを吹く」というホラは、うそとか大げさなことという意味で使われています。法螺というのは法螺貝のことで、正しくは螺貝と書き、大きな巻き貝のことです。インドでは吹奏楽器のひとつとして使われ、日本でも昔は戦場での合図や戦意高揚のために使われて、陣貝じんばいと呼んでいました。

法螺という名称は、インドから中国に伝えられた仏教経典に「大法螺だいほうら」という訳語で書かれています。仏教では法螺貝を吹くことを仏の説法にたとえ、お釈迦さまが教えを説くことを「大法螺を吹く」という表現で書かれている経典もあります。今日一般的に使われている「大法螺を吹く」は、「お釈迦さまのような言い方をする」というあたりから「偉そうなことを言う」といった意味に転じ、それが次第に「大げさな」とか「うそ」といった意味をもつようになったものです。

静岡県成道寺 伊久美 清智師 著より