第129話 唯我独尊(ゆいがどくそん)

「彼の考えは唯我独尊だ」というように「身勝手な」とか「ひとりよがりの」という意味で使われるこの言葉ですが、お釈迦さまがお生まれになったとき、七歩あるいて右手は天を、左手は地を指さして「天上天下 唯我独尊」と言われたという話から用いられるようになりました。

文字のままに読めば「この世界中で我一人が尊いのだ」ということになり、なんと偉そうなことを言っているのだろうと思ってしまうのですが、この言葉の真意は、「私たち一人ひとりはかけがえのない尊い一人ひとりなのです。この地球上には何十億もの人々が住んでいます。でも、あなたはたった一人しかいないのです。かけがえのないたった一人の自分を大切にして下さい。

さらに他の人々の生命も大切にし、思いやりの心を持って下さい。」という教えを示したものです。決して「お山の大将われひとり」といった自己中心的な考えではなく、人の命の尊さを説いた基本的人権の宣言なのです。

静岡県成道寺 伊久美 清智師 著より