第131話 律儀(りつぎ・りちぎ)

「あの方は、りちぎなお方でして」と使われる「りちぎ」は、真面目で堅ぶつな人のことを言います。

仏教では「りつぎ」と読んで、身体的行為と言語的行為とが習慣づけられたことを意味します。外面に表現されず、他人にも示されない習慣的行為には善と悪とがあり、その善い行いを律儀りつぎといい、戒ともいいます。非を防ぎ悪を止める戒律のことです。

つまり、生きものを殺さない、盗みをしない、うそをつかないといったような人間としての基本的なものから、仏教教団が拡大し修行者が多くなるにしたがって、二五〇~三四八という数の戒律が作られていきました。これほどの戒律が設けられると、常識で考えれば身動きができなくなり、ものも言えない、心をめぐらすこともできなくなってしまいそうです。

このことから真面目で几帳面な人のことを律儀者りちぎものというようになりました。「いろはかるた」に「律儀者の子だくさん」というのがありますが、真面目で遊びにもいかないような堅ぶつでも、子どもだけは次から次へという現象を風刺したものです。

静岡県成道寺 伊久美 清智師 著より