第134話 六根清浄(ろっこんしょうじょう)

以前は富士山など高い山へ登るときには「お山は晴天、六根清浄」とかけ声をかけながら登山したものです。
日本では昔から多くの山には神仏がまつられ、山全体が信仰の対象となっていました。登山の際には衣服や心身を清浄して、その心構えを「六根清浄」のかけ声に託して、登山の無事を祈りながら登ったものです。

六根とは人間の持つ六つの感覚器官のことで、眼(視覚)耳(聴覚)鼻(臭覚)舌(味覚)身(触覚)意(感情・意識)をいいます。六根は人間生活の基礎をなすものであり、六根清浄とは六つの感覚器官を清めることで、人間性の向上につながるとみることができます。

日常生活において、どうしても嫌なことを聞いたり、考えたりもする。これらを積み重ねていると、しだいに六根に汚れがたまってくるのをさけられない。汚れに染まると、なかなか落としにくくなるので、それを払い落とし、清めることがすすめられるのです。したがって、登山者が神聖な山に登るときに、心身ともに清らかになることを祈念する意味の唱え言葉となったものです。日常使われる「どっこいしょ」は「ろっこんしょうじょう」が短縮されたものといわれています。

静岡県成道寺 伊久美 清智師 著より